今日は特別寒いと思ってたら、練習中雪が降ってきた。
積もりそうな雪じゃない。どんよりした空を見上げたら、雪の隙間から図書室が見えた。

今日も残ってんのかな。あいつ。
遠野あかり。

しゃべったこともあんまりないけど、さらさらの黒髪を一つに纏めて、優等生っぽい。
友達としゃべってるとこなんか見ると、無邪気で結構可愛いような気もしている。
俺のような、体育会系丸出しの男は苦手だろう。
部活終わりに図書室から出てくるのを何度か見たことがあって、放課後よく立ち寄ってるみたいだ。

「藤堂、帰ろうぜー」

やっと練習が終わり、水分補給をする。
雪が降ってはいるものの、汗だくで喉が渇く。ついでに腹も減っている。
部活終わりはラーメン食って帰りたい衝動との戦いだが、小遣いを使いすぎた俺は、たまにはまっすぐ帰ってこいと昨日母親にきつく言われたばかりだった。
17歳の俺は、食い気とサッカーでできている。

そんなことを考えながらグラウンドから廊下へと歩いていると、女子生徒が蹲っていた。
こんなところで何だ?
何人か、そいつに話しかけてたが、動く気配もない。

……っておい!

「遠野じゃん。大丈夫?」

つい声を掛けたら、遠野は目を丸くして顔を上げた。