私が住むこのあたりは、雪が降るのは珍しい。

ちらちらと小さく白い雪が舞い降り、手を広げて灰色がかっている曇り空を見上げる。

放課後、雲の隙間から見えていたはずの茜色と群青色の夕焼けは、深いグレーの空に変わっていた。
下校時刻を知らせるチャイムが鳴った。
図書室で勉強していたらこんな時間になった。

いや。していたのは勉強ではない。
図書室から見下ろせるグラウンドを眺めていたのが本当の理由……。

グラウンド脇の廊下に、点々と立っている灯り。
キンと冷える空気の中、薄オレンジ色のライトに照らされて、さっきまでグラウンドを駆け回ってボールを追いかけていたサッカー部の人たちの体から、白い湯気が見える。

私は、誰にも見つからないように、端に寄って校門までの廊下を歩いた。
ずっと見ていたくせに、見つかるのは怖い。