『好きだ。俺と付き合えよ。』『私も...好きだった...っ』

「はぁあぁあ♡♡」
テレビの前でみっともない声を漏らしているこの少女の名前は、立花海。そして、そんな姉を呆れたようにため息をつくもう一人の少女は、立花泉。
海と泉は双子の姉妹。姉の海は、可愛いものや恋愛ドラマなどが大好き。ちなみに、彼氏もいる。いわゆる乙女というやつだ。一方、妹の泉はと言うと、どちらかというとかっこいいものの方がすきだし、恋愛ドラマなんて興味もない。もちろん彼氏なんてものいるはずがない。
まあ、そんな二人の共通点といえば、"顔”だろう。
目はぱっちりとしたふたえで、まつ毛が長い。顔も小さく、鼻もスラっと高い。二人は美人なのだ。男子からの人気も熱く、よく告白される。海はその中の何人かと付き合ったことはあるが、泉は全て断っていた。なんていったって興味が無いのだ。というか、友達といる方が幾倍か楽しい。

そんな泉の最近の悩みは、とある男子。ずっと影でこちらを見ている。話しかけるわけでもなく。悪いようにいってしまえばストーカーだ。そのストーカー男を見ると泉はとてもイライラする。
(話したいなら、ハッキリいえよっ...!)
ついにイライラが頂点に達して、言ってやった。
「あんた、誰。」
影でコソコソしてるくらいだからもっとなよなよしてるかと思ったが、ストーカー男の目は、とても真っすぐだった。
そして、
「あなたは、立花海さんですか?!」
「...」
「...」
意味がわからない。影でコソコソして、挙句の果てにひとちがい?!
(はぁ??)
(立花海は私の姉だよ。)
「は?立花海は私の姉ですが?」
呆れすぎて声が漏れてしまった。
「え...?あなたは立花海さんでは...ない...?」
「はい。私は海の妹の泉です。」
「そ、そうだったんですね...。な、なんかすいませんでした...」
そう言うと、ストーカー男は去っていった。
(なんなんだよ。あいつ。今まで悩んできた私の時間返せっての。)
その日、泉のイライラはおさまらなかった。