「そろそろ通報しますよ?」

「どうぞご勝手に」

窓から差し込む光で目が覚めると、そこには昨
日の男の子がいた。

昨晩は玄関の鍵を閉めたことを何度も確認して
念の為チェーンもかけた。

なのに、なんで家の中にいるの…。

「ベランダの鍵開けっぱなしだったよ」

親切なのか顔に出ていたことをいったのか…。

どちらにせよベランダから入ろうが玄関から入
ろうが不法侵入に変わりはない。

そろそろやめてもらわないとこれからの生活に
支障がでるかもしれない。

私以外、誰も居なかったはずの家に人の温もり
がある事がむずかゆくて今すぐにでも家から出
て言って欲しかった。

「てか、時間いいの?バイトだよね」

ぱっと時計を見ると集合時間の約20分前だ。

「え、急がなきゃ!てかなんで知ってるの!」

文句を言いながらも急いで準備を始める。



バタバタと家を去りバイト先に着いて思い出す

___家の鍵、閉め忘れた…

「はあー、もう最悪!」

深いため息を吐いて、もしも他の人に家に入ら
れたらと考えるとゾッとする。

「あ、鍵閉めたいたよ」

ん?

聞き間違えたのか男の子の声が聞こえた。
気のせいだと信じたい。

「鍵開けっぱなしだったよ」

もう一度聞こえた聞き覚えのある声に振り向く
とそこにはやっぱり男の子がいた。

家の鍵を閉めてくれたことには感謝しているけ
どどうして鍵を持ってるの…。

何も答えずにため息を吐けば男の子は私に何か
を差し出す。

私の…サイフ?

慌ててカバンの中を探すも自分の財布は見つか
らず、代わりによく似た財布が入っていた。

「これ…えっと…あなたの?」

「そう、俺のだよ」

ごめんねと言えばありがとうと返ってくる。

それよりもなぜ私のバイト先を知っているの?

私が家を出た時には男の子はまだリビングで朝
食を、無断で作っていたところだった。

急いでいたため、無断使用のことは言わなかっ
たけど、人様の家に勝手に上がり込んで…。

もうなんか、どうすればいいのか…。