責任感の強い彼が任された仕事をほったらかして日本にいるなんてあり得ない。


そんな分かりやすい嘘を今つかなくたっていいじゃないっ……。


平気なんかじゃない。

寂しいに決まってる。

いてくれるなら、ずっと傍にいてよ。

湧き出す感情が涙となって千歩の目から零れ落ちていく。


「おい、泣くなよ。今生の別れでもあるまいし。いや……まぁ、それも無いとも言い切れないが――…」


「バカ!」


千歩は思わず声を荒げた。

縁起でもない言葉なんて冗談でも言わせない。

仕事が仕事なだけに、口にすると現実になってしまいそうで怖いのだ。


「もうNYでもどこでも行っちゃえ。帰ってくるな!」


千歩は乱暴に吐き捨てると秋人のポケットから手を抜いてズンズン先を歩いた。