「その為に来たんですよ!一体何なんですか⁉」
さすがの秋人も語尾を強めた。
いい歳をした大人がいつまでもこんな茶番に付き合っていられない。
「取調べだ」
千歩の父親は相変わらず大真面目な顔をして言う。
「いや、お父さん……結婚の挨拶だから」
千歩がすかさずツッコんだ。
それが幕引きだと言うように、スタンドライトの電源が落とされる。
「こういった取調べを一度でいいからしてみたかったんだ」
秋人の父親はしみじみ言う。
エリート街道まっしぐらだった秋人の父親は、千歩の父親が経験してきたような取調べに密かな憧れを抱いていたらしい。
だからって今やらなくても……と秋人は額に手を当てて呆れ顔。
秋人の父親は二人の前に出したカツ丼と電源の切られたスタンドライトをスッと横にずらす。
冗談はこの辺でおしまい。
そう言っているように父親たちの背筋がピンと伸びる。



