手のひらに巻かれた包帯が痛々しい。

「千歩、これからもよろしく」

秋人の手によって千歩の薬指に指輪が嵌められる。

“これから”があることに千歩は心から感謝した。

涙が止まらなかった。

制服姿で泣きべそかくなんてカッコ悪い。

父が見たらきっと叱るだろう。

そんな千歩を秋人は優しく抱き寄せて、キスをした。

カーテンの隙間から入ってくる日差しが、薬指に嵌められた指輪をキラリと光らせる。


“二人の未来は明るい”と告げているみたいに。




No.05 カツ丼と未来のお話 Fin.