「まさか先に言われるとは思わなかった」

秋人の困り顔を見て、千歩は自分がしたことの重大さに改めて気付いて赤面する。

「……ごめんなさい」

もう謝罪しか出てこない。

男の面目丸潰れ。

穴があったら入りたい。

この際、ベッドの下でも構いません。

「いいさ。どっちが言ったって想いは変わらない。千歩、俺たち結婚しよう」

「本当に私でいいの……?」

「千歩がいいんだ」

秋人は迷わず答えた。


『彼はその“一番”に千歩を選んで、分かりやすく特別だって言ってくれてるんだから。それの何が不満なんだか……』


麻衣子の言った言葉の意味がようやく分かった気がした。

「手貸して」

秋人に言われて、千歩は思わず利き手である右手を出してしまう。

秋人は痛みを堪えつつ小さく吹き出して「左手」と千歩の手を取った。