秋人は包帯が巻かれた手で千歩の頭を優しく撫でて、「泣き虫なところが千歩の小さい頃にそっくりで放っておけなくてさ……」と冗談を交えながら話して聞かせた。
その子を凶悪犯から守る為にこんな傷を負ったのだ。
千歩には何も言えなかった。
自分が同じ立場でもきっとそうしたから。
誰に“バカ”だ“アホ”だと言われてもそれだけは間違いないと思うから。
それでも、もし目の前の愛しい人が死んでしまっていたらと考えると、どうしようもなく心がざわついた。
「……じゃあ、誰が守るの?たくさん誰かを守るのに、秋君のことは誰が守ってくれるの?」
千歩は震えた声で尋ねた。
馬鹿げた質問だと自分でも思う。
答えなんて出せなくて当然だった。
見返りを求めてやっている仕事じゃない。
秋人は何も言わずに千歩の頭を撫で続けた。
この大きくて優しい手は誰が守るんだろう――…



