犬猫ポリスの恋日常


彼の青白い顔を見ると、たまらずすがり寄った。

「……秋君!秋君ってば!いやだよ……秋君……」

千歩は秋人の手を握ったり、身体を揺すったりしてみる。

温もりは感じるのに反応が無いと途端に不安になった。

千歩の目から堪え切れなかった涙が一粒零れた時、秋人の指先がピクリと動く。

「そこ……痛いから……」

今にも消えてなくなってしまいそうなか細い声で秋人が言う。

千歩の泣き顔が見ると、笑いながら「泣くなよ」と彼女の目元に手を伸ばした。

「だって、血がいっぱい。死んじゃったかと思った……」

「このくらいで死ぬかよ」

「何でこんな怪我したの。武道も試験もいつも優秀だった秋君が何で……」

「女の子がいたんだ。事件の渦中(かちゅう)で母親探して泣いてる小さい女の子」