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刑事部で秋人が運び込まれた病院を尋ね、制服のまま警察署を駆け出して、千歩が病院に着いたのは事件のことを知ってから一時間が経った頃だった。
病院の受付で病室を尋ね、エレベーターを待っている時間も惜しくて階段を駆け上がる。
息を切らして病室の前に立つと、ちょうど病室のドアが開いた。
「まぁ、千歩ちゃんじゃない。どうしたの……」
秋人の母親は驚いて思わず声を上げた。
千歩は息も絶え絶えに「あ……秋君……は……」と尋ねる。
秋人の母親は千歩の背中を優しくさすり「秋人なら中にいるわ」と告げると、病室から出て行った。
中に入ると、奥のベッドで眠る秋人の姿が目に留まる。
サイドテーブルには割れたサングラスが置かれ、真新しい血痕が付着した衣類がハンガーにかけられていた。



