犬猫ポリスの恋日常


「猫島 秋人……」

千歩は席に座ったまま愛しき人の名前を口にする。

その声は震えていた。

「そう、その人。間違いないよ」

千歩の気持ちなど知る由もない彼らはスッキリしたような表情を見せる。

落胆した千歩の様子を横目に、麻衣子は制服警官の胸倉を掴んで「犯人は捕まったんでしょうね!彼の容態は!?」と矢継ぎ早に責め立てた。

「は……犯人は現行犯で捕まりましたよ。負傷した刑事の容態までは――…」

制服警官は苦しそうに表情を歪めて答える。

容態までは知らない。

それが分かったと同時に麻衣子は彼の胸倉から手を離した。

「ありがとう」

麻衣子は悪びれた風も無く毅然と礼を述べる。

胸倉を掴まれた彼はとんだとばっちりだと不満そうに連れとその場を後にする。