麻衣子の恋愛偏差値は千歩と比べてはるかに上をいく。
千歩の悩みはフリー女子にとっては贅沢な悩みのようだ。
千歩はカツ丼とセットでついてきたお吸い物をすすりながらしみじみ考えていた。
「……おい、聞いたか?さっきの事件」
「ショッピングモールの駐車場で起こった無差別殺傷だろ」
「アレ、刑事が一人やられたらしい」
「マジかよ……」
「一課も躍起になってる」
若い二人の制服警官が会話をしながら麻衣子と千歩の横を通っていった。
千歩と麻衣子は互いに目と目を突き合わせる。
そして、麻衣子が席を立った。
「あの、その刑事誰だか分かる?」
麻衣子が尋ねると、制服警官たちは空の食器が乗ったトレーを持った状態で振り返った。
「あの人だよ。最近、NYから戻ってきたとかいう……」



