彼女ならすぐに千歩に報告して、まわりに女豹が寄り付かないように規制線を張ったに違いない。
それが安易に想像できて、千歩は小さく笑った。
「麻衣子も見たでしょ。刑事部エースの恋人がこんな凡人だとあの反応が普通だよ。昔からそうだもん。
私が秋君のそばにいるだけで“なんで?”“どうして?”って顔される。当の本人は気にもとめてないみたいだけど……」
秋人の呑気癖も相変わらずでたまに嫌になる。
千歩は不満を漏らしながらご飯をかきこんだ。
「なにそれ。自慢かよ……」
「今の話のどこに自慢要素があるのよ」
ただの愚痴だと話す千歩に対して、麻衣子は呆れたように溜め息を零した。
「まわりなんて気にならないくらい千歩が好きって事じゃん。恋愛において“一番”意外は何の意味も無いんだよ。二番も百番も同じ。
彼はその“一番”に千歩を選んで、分かりやすく特別だって言ってくれてるんだから。それの何が不満なんだか……」
麻衣子はやっぱり“ありえない”という風な表情を浮かべた。



