「綺麗……」

千歩は続けて何発も打ち上がる花火に目をキラキラ輝かせる。

浴衣姿で花火が見らえるなんて夢みたい。

なんだかんだと不満はあったが、たった数発の花火だけで千歩の心は洗われるよう。

秋人はそんな千歩を見て、不意にドキッとするのを感じた。

小さい頃から彼女の事は何でも知っているはずだった。

それなのに、今自分の横にいるのがまるで知らない女性のように感じる。

千歩がどう思おうと、一生彼女には敵わない。

秋人は今この瞬間にそう確信した。

「秋く――…」

千歩が話し出す前にキスをした。

彼女の華奢な肩を抱いて、割れ物を扱うような優しいキス。

花火の音なんてもう聞こえない。

二人の間に永遠のような時間が過ぎていった。



No.03 訓練のお話 Fin.