「こんなめでたい酒が飲まずにいられるかよ。ほら、秋人君も飲んで!」


千歩の父は秋人のグラスになみなみとビールを注ぎ込んだ。


「秋君、ごめん……。うちの父さん、本当に嬉しいみたいで」


千歩は横に座る秋人にペコリと頭を下げて謝罪する。

すると、彼の大きな手のひらが千歩の小さな頭を撫でた。


「お前が謝る事ないだろ」


「そうなんだけどさ……」


「俺の父さんだってあれで結構飲んでるから。久しぶりに犬山のおじさんと酒が飲めて楽しいんだろう。息子のNY出立祝いなんて飲む口実なんだよ」


秋人は先ほど注がれたビールをグラス半分まで飲み干す。