最近、彼氏と破局したばかりの麻衣子はその若いカップルを睨みつけながら信号が青に変わるのを待っている。

「リア充爆発しろ……」

警察官にあるまじき失言。

フロントガラス越しから麻衣子に睨まれて、若いカップルは怯えたように横断歩道を早足で渡っていった。

信じていた彼氏に酷いフラれ方をしたのだ。

どうか許してやって欲しい。

しばらくすると、目の前の信号機は赤から青に変わる。

「ところで、千歩はどうなの?バレンタインデーにチョコレートを渡す相手がいるの?」

運転を続けながら麻衣子が問う。

千歩の心臓はドクンと大きく跳ねた。

今、真正直に答えたら彼女の手によって爆発させられそうな気がする。

しかし、千歩は嘘を付くのが昔からとても苦手だった。