真夜中、寝室の扉が静かに開閉する。

調べ物を終えた秋人が千歩の眠るベッドに近付いてきた。

千歩はそれに気付いて薄目を開ける。


相手なんかしてやるものか……


秋人がそっとベッドへ上がってきても、千歩は背を向けたまま微動だにしない。

彼だって明日は早いのだ。

どうせ疲れてさっさと眠りにつくはず。

そう思っていた千歩だったが、その考えとは裏腹に背中に彼の温もりをじんわりと感じた。

彼のひとまわり大きな体が千歩の体を後ろから包み込んでいく。


「千歩……おやすみ」


秋人の低くて柔らかい声が千歩の耳をくすぐる。

心臓の鼓動が治まらなくて、このままでは狸寝入りがバレてしまう。

気が進まない時は徹底して離れるくせに、好きな時に甘えてくる。

それを拒めない自分がなんとも悔しい。


「……おやすみ、秋君」


千歩は布団の中から秋人の手を探し出し、その手をギュッと握って眠りについた。