「今日は寒かったから買ってきてみたの。秋君が好きな大根もあるよ」
千歩は気を取り直して明るく振る舞った。
今夜はたくさん時間があるんだ。
焦る事は無い。
おでんで温まりながら、NYでの話をたくさん聞かせてもらうんだ。
そう思うと自然と胸が躍った。
「準備するから一緒に食べようよ」
千歩も上着を脱いで、食事の準備に取り掛かろうとした。
「悪い。今日中に調べたい事があるんだ。後でもらうから先に食べてろ」
秋人は千歩の誘いをあっさり断って、荷物とともに自分の部屋へ消えていった。
一緒にごはん食べたり、会話したりしたいと思っているのは私だけ……?
千歩の心の中では不満が洪水を起こしている。
席についておでんのフタを開けると、からしをたっぷりつけて、味わう間もなくさっさと口に放り込んでいく。
その心中がおでんの食べ方に表現されているよう。



