***
その日は凍えるほどの寒さを記録した日。
都内でもちらほらと雪が舞っていた。
どうしてもコンビニのおでんが食べたくなって、大きな器に二人前買って帰った。
「ふぅ……寒い。ただいま」
玄関から声を掛けても返事が無い。
しかし、リビングには明かりが灯っている。
秋君がいるのだろうか……それとも――…
千歩は仕事柄、“変質者”という可能性がどうしても捨てきれなかった。
警戒しながら少しずつリビングに近付いてく。
扉を開けると、そこには帰宅したばかりでコートを脱いでいる秋人の姿があった。
「居たんなら返事してよ……。変質者かと思ってビクビクしたんだから」
千歩が苦言を呈しながらおでんをダイニングテーブルへ置くと、「悪かった」と謝罪が来る。