もう絶対絶命だ――!

嗚呼、ヒト科の無精髭が見える。わたしの視界を占領する。

その毛根までもがくっきりと網膜に焼き付き始めて――




――…って、は?



「メーン!!カイリスイカ撃退かんりょー!!」

「いろは姉ちゃん、俺らが助けにきたからな!どーだカイリ、まいったかー!」




ジョリ、と。

髭が頬を強く撫でる感覚に肌が総毛立つ。

頬から伝わってくる体温。

ただでさえ暑いというのに否応なしにピッタリと寄せられたソイツの素肌。ジョリジョリ感。

何がなんだかわからない。今、あの子たちの声が聞こえたような気がしたけれど?



「……ちょっと」

「………」

「おいヒト科!いい加減退いて――」




飛び出した言葉は至極当然といったもの。

だって暑いし。ジョリジョリ感がなんとも不快だし。て言うかわたしの心臓が死にそうだし。

このヒト科の後頭部目掛けて攻撃したユウヤとタクミはすでに視界の隅で「待てコラー!」自分たちの遊びに奔走していた。

しかしながら、わたしはそんな子どもたちの動向を注意深く観察している余裕なんて皆無。






半ば信じられない思いでピタリと石のように固まった。

そしてぎこちなく視線を向かわせた先は、








「どこ、さわってんの?」

「いや……不可抗力?つーか意外とお前胸あん――」

「(ブチィッ)」






わたしの中で堪忍袋の緒が切れたのは言うまでもない。

何気に指摘しても鷲掴んだままのヒト科の手を渾身の力ではたき落とし、ヤツに大きな大きな雷を落としてやったことは記憶に新しい。


そんな中子ども二人は直ぐに例の巨大スイカを叩き割ってしまった。




    ところで割れたスイカって

  ( 一体どこで仕入れたの浬さん? )

        *saki