（そんなの簡単に出来てたら、こんな所には来てないよ！）


出来ないから来たんじゃない、と思いつつ精算を済ませて病院を出ようとした。

近くの調剤薬局で薬を貰ったら何をしよう…と思い始めると後ろから走ってくる足音が聞こえ、振り返って見たら同級生でもあるドクターが近寄ってきて、「これから何か用事がある？」と言うから驚いた。


「えっ、別に何も」


薬貰うくらい…と返事すると彼はニコリと笑い、それじゃ一緒に食事でもしないか？と訊いてくる。


「…俺、午後から休診なんだ。今日は往診もないし、久し振りに暇だから」


（それは私を暇つぶしに使おうと思ってのセリフ？）


捻くれてそう思い、まあ別に構わないけど…と返事した。
今泉君は口角を上げると、それじゃ診察時間が終わる頃にまた戻って来て、と言い渡し、再び病院内へと入って行く。


（えっ！？もしかして、わざわざ誘う為だけに出てきたの？）


ええーっ何で！？と頭の中で絶叫しながら背中を向け、さっき感じた憤りは忘れて階段を降り、軽くときめきながら調剤薬局を目指した。