…でも、間近に彼の顔を見ると結局何も言い返せず、俯き加減に頭を下げ、「踵が痛かったけど、何とか歩いて帰ったよ」と悔しさ混じりに返事した。


「そうか。怪我しなかった?」


自分のしたことの所為だというのは、彼も重々承知なんだろう。心配そうに訊くもんだから、ううん、と首を横に振り、大丈夫…と教えた。


「いつも学校のグラウンドで、子供達と駆けずり回ってるお陰かな」


足の裏が鍛えられてるのかも…と言うと、ホッ…と安心した様な顔を見せられ、あの時のキスについてはもう掘り返さないでおこうと決め、それじゃ…と声を発し、背中側にあるドアへ向き直ろうとした。


「あっ、望月さん」


背後から掛かった声にビクッとし、意識しないと心に決めてから振り返った。


「な…」


に…と声を発しようとしたんだが、それは彼のドアップに阻まれて__


「また会おう」


そう言うと彼の顔が近づいてきて、チュッ…と音を立てて頬に吸い付くもんだからビックリした。