イメージ通りじゃない彼と、ときめくリアル恋愛

彼に送られてマンションに着いたのは午後七時過ぎ。

本来ならまだお子様の時間なんだけど、私は胃痛持ちで治療中。だからお酒も飲めないし、お腹を冷やすのが何より一番ダメだと言われて、アッサリと此処まで送られた。


「今日はありがとう」


シートベルトを外して車外へと出ようとしたんだが、急に彼が、あ…と言うのが聞こえ、私も咄嗟に思い出したことがあり、バッグの中に手を突っ込む。



『これ』


二人同時に言葉を発して目が点になる。

私は、この間履いて帰った今泉クリニックのスリッパを握り、彼は、私が忘れて帰ったコートと靴を入れた袋を手にして見合ってた。


『はい』


同時にまた同じ言葉。お互い少し笑いを含み、持ってる物を交換。


「この間…」


スリッパを手にしたまま呟く彼の声にドキンと胸が鳴り、返して貰った服が入った袋を持つ手に力がこもる。そのまま顔を俯けたら、彼はスリッパが入った袋を後ろの席に放り、「あれでよく帰れたな」と親指で差しながら笑った。


「それは…」


今泉君が突然キスをしてきたからでしょ、と言いたくなって顔を上げる。