「えっ、う…」


うん…とは言えず黙って俯く。

彼はそんな私から視線を上げると歩きだし、反対側にあるブティックに着くと手招いて、来い来い…と指先を上下させた。


「望月さん早く!」


名前を呼ばれると妙に焦る。
何処かに知り合いでもいたら堪らないと思ってダッシュし、彼のいる方へと近付いた。


「この服が気になるんだろ」


マネキンの隣に立つ彼はまるでモデルさんみたいに格好良くて、お店の人もすかさず近寄ってきて、ニコニコしながら「ご試着なさいませんか?」と勧めてくる。


「いえ、あの」

「いいじゃん、着てみろよ」


きっと似合う、と断言するもんだから断りきれず、押しの弱い私は、スゴスゴと試着室の中へと入った。


「カラーはマネキンと同じでいいですか?」


店員さんに尋ねられ、はい…と小さな声で返事。


「では、これをどうぞ」


サイズを教えると同じカラーの物を手渡され、シャーッと閉められたカーテンの中で一人、これ本当に似合うんだろうか…と疑問に思いながらも着替えて、「如何ですか?」と問われるからカーテンを少し開け、おずおずと顔を覗かせば__。