イメージ通りじゃない彼と、ときめくリアル恋愛

パタン…とドアを閉め、部屋の玄関口にスリッパを脱ぐ。

あー踵が痛かった…と声を漏らしながら脱いだものを振り返り、私の靴…とションボリした。


「あれまだ買って間もなかったのに…惜しいことした」


それに、初冬用のコートも今朝下ろしたばかりだった。
いくらモタモタしてたらダメだと焦ったとは言え、バッグだけしか持ち帰らないなんて。


「あーあ、どうしよう」


そう言えば点滴代も支払わずに帰ってきてしまった。でも、どうせ事務の女性もいなかったし、踏み倒したところで文句も別に言われないだろうとは思うけど……。


(そうよ。今泉君が勝手にしたものだし)


迷惑を掛けたくせにロクでもない事を考えつつ、うがいを済ませてフェイスタオルで唇を拭いたら、さっきのことが頭を掠めた。


(……彼のが、ここに触れたんだ)


そっと指先で唇を撫で、あの時のことを思い出しながら、高鳴ってくる胸の音に耳を傾けそうにもなったけど__。


(…ハッ!ダメダメ!)


あんな行為を許しちゃダメだ…と思い出し、もしも次に会ったら抗議してやろうと構えだす。