葵ウォッチングが趣味だったから…とほくそ笑み、こっちはパクパクと金魚みたいに口を動かすのみ……。


「これでもう全部喋ったぞ。隠し事は無いからな」


清々しい顔で、スッキリしたぁー…と安心する今泉君。
今日まで言えなかった事が明るみに晒され、すっかり安堵の表情をしてる。


(もう……)


そんなこと、どうして黙ってたんだろう。
早く話してくれてたら、こんなにやきもきしなかったのに。


(彼とももっと早く、仲良くなれてたかもしれないのに)


悔しいという気持ちよりも、残念という思いが増してくる。
私が図書室で本を読みながら彼のことをイメージしてた間、彼は私に気持ちを寄せ続けてくれたんだ……。



「葵…?」


どうした…と言いながら指先を伸ばす今泉君。
目尻に触れて涙の雫を掬い、困った様な表情を見せた。


「もう…」


泣きたくもないのに…と思うけど、どうしてか涙が零れ落ちてくる。

あの図書室でお互いを見合ってたような遠い関係じゃない私達は、こんな風に近くで手に触れたり体に触れたりして、声を聞いて話して、笑い合ってもいいんだ。