「ここ痛いか?」

「少し」

「ここら辺は?」

「若干」


…実は擽られたせいで少し痛みが治まってしまい、だけど、どうしても診ると言う彼の手前、さして痛くもないけど、痛いと言わないといけなくて。


「痛み止めあるか?」

「あるよ。あそこ。デスクの上」


指先を壁際へ向けると彼は立ち上がって近付いた。


(…ハッ、そうだ!デスクの上にはあれが…)


置きっぱなしにしてた卒アルの存在に気づく。
先週実家から持ち帰り、時々ページを開いては何度もラストの文字を確認してたんだ。

あのメッセージを書いたのが今泉君がどうかも分からないのに、彼だったらいいのに…と夢ばかりを追って。


彼はそれを見つけてどんな反応してるのか…とちらっと様子を窺う。
デスク上で薬袋を見つけた彼はそれを手にして、一瞬固まったようにも見受けられたんだが。


…でも、直ぐに何でもないような顔つきで振り返り、キッチンへ向かうとグラスに水を入れて戻ってくる。

薬袋の中から一錠痛み止めを出された私はそれを受け取り、ゴクンと水で流し込んだ。