「洸大〜!」


頑張ってるー?と回診してるところへ面倒くさい相手がやって来た。


「環…」


振り返った俺は立ち止まり、歩いてくる相手を視界に入れながら、此処ではせめて「先生」と呼べよと思ってた。


「今忙しい?」

「見りゃ分かるだろ」


白金環は、俺が看護師と一緒に病棟内を回ってると知りながらも、チラッと様子を窺ってくる。


「忙しいに決まってんだろ。三週間も休んで、この一週間地獄の日々を送ってるよ」


月曜からこっちいい加減働かされ過ぎだと抗議したくもなるが、相手は医院長の一人娘、やたらと文句も言えやしない。


「ふぅん、そうなんだ」


だったらいい…と踵を返す環は、チラッと俺に目線だけを向け__。


「今ね、玄関ロビーで懐かしい人に会ったのよ。だから洸大にも教えておこうかな…と思ったんだけど」


忙しいならいいわ、とツレなく行こうとする相手の肩をぐっと掴んで呼び止めた。


「待て」


相変わらずガッチリしてる肩だな…と頭の中で思い、これを言ったら間違いなくシメられるな…と考えつつ、「それって誰のことだ?」と訊き返す。