「うん、いいドクターがいるのを思い出したんだ」

「へぇ、それ何処?」


今後の参考に…と思って訊くと、千歌は「記念病院」と言いだした。


「記念病院って…あの白金記念病院のこと?」

「そう。葵も覚えてるでしょ。ドンのこと」

「うん、勿論」


ドンと私達が呼ぶのは、その白金記念病院の一人娘でもある同級生、白金環(しろがね たまき)のことだ。


彼女は中学時代からクラス委員や生徒会の副会長をするくらい女子の信頼を集めてた人で、姐御肌で面倒見が良くて、成績も優秀で非の打ち所がない女子だった。


「ドン、今そこのドクターやってるの?」


話の流れからして、実家の病院で医師をやってるのかと思いきや。


「ううん看護師。しかも外科の主任ナースらしいよ」


そこでブイブイ言わせてるんだって、と笑う千歌の話を聞きながら、彼女ならあり得そうだと思って笑う。


「それで?ドクターって、ドンじゃなければ誰のこと?」


胃を診るなら内科医だよね…と頭の中で思い描くと、千歌はフフン…と鼻を鳴らし。


「葵、『執事』のこと覚えてる?あの黒縁メガネかけた秘書みたいな男子」