それが歯痒いって言葉を口にしてたし、だからきっと、その思いが爆発して、あんなキスになっただけだと思う。


(それにしては激し過ぎる。食べられるかと思った…)


オオカミに…と思うが、自分は赤ずきんじゃない。


(あんな…獣みたいな顔もするんだ)


そう思うと胸がぎゅっと苦しくなる。
甘噛みされた耳朶もまだ熱いし、この熱、冷めるんだろうか。


(こんなままで放置するなんて、あの人きっとサドだ)


やりきれない…と独り言を漏らす。
一人で勝手に盛り上がって焦らされて、私ってバカみたい。


「もう。ヤダ…」


こんなの期間限定の付き合いにあってはダメだ。
これ以上彼に触れられたりしたら、私が彼を忘れられなくなる。


(次こそは絶対に隙を見せないようにしないと)


そうは思うが押しに弱い私。
また押し切られたらどうする?


(相手は鬼軍曹みたいなところもあるし)


鬼でオオカミでサド。
私が思う今泉君のイメージは、どんどん前とはかけ離れてく。


(それでも、こんなにドキドキするのはどうして…?)