「よ、お疲れ」
「あ、うん、お疲れ様」
頭がはげそうなほど悩む私とは裏腹に、臣は何ら変わらない様子で顔を出す。嬉しいはずなのに心から喜べないのが悲しい。いつ聞かれるか、そればかり気になって臣の顔がまともに見られない。
「今日なに?」
「カニクリームコロッケ」
「いいね、うまそう」
言いながら我が家のように玄関を上がり、リビングへと向かう。その背中にため息をついた。もういい加減覚悟決めなきゃな。きっとこれは神様がくれたチャンス。いや、正確には三井さんがくれたチャンスなのだけど、うだうだ考えるより、素直に答えるのがベストなのかもしれない。
臣を見てなぜか決意が固まった私は、よし! とこぶしを握ると、中途半端にしていた具材を超特急で刻んだ。
