◇
「はぁ……」
玉ねぎを刻む手に力が入らない。
今日はあの事件から初めての水曜日を迎える。美麗の好きな奴は誰だって絶対聞かれるはず。そう思うと朝から胃が痛い。もし聞かれたらその時はなんて答えればいいの? 素直に臣だって答える? いや、ないない。そんなことできたらとっくの昔に告っている。
だけど三井さんが断言してしまった以上、今更誤魔化すのは無理だろう。じゃあどうしたら……。再びため息をつき頭を抱えた。
―――ピンポーン。
そこにチャイムの音が部屋に鳴り響いて、ドキッとして背筋が伸びた。臣だ。いつもだったら嬉しくてスキップしながら玄関に向かうのに、今日はさすがに足が進まない。なんて言おう、もう告ってしまおうか。いやいや、振られて泣くのがオチだ。結局考えがまとまらないまま、いつもより重く感じるドアを開いた。
