「あ、あの、ちが……」
「二人の秘密だよねー?」
首を傾げ賛同の笑を私に向ける三井さん。なにを言っているの、この人は。思いっきり正面から睨む。
昨日ちょっと優しくしてもらったからすっかり彼の本性を忘れていたけど、三井さんはお調子者で、すぐに話を盛る人だった。つい心を許してしまいそうになっていた私が愚かだった。
私はまだなにか言おうとしていた三井さんを阻止するように、ドンっと机を叩いて立ち上がった。
「三井さん! 変なこと言うのやめてください。誤解されるじゃないですか! 私たちあのまま真っ直ぐ帰りましたよね? やましいことなんて何もありませんでしたよね!」
言い終えた瞬間、スッとした。泣きじゃくった後のような爽快感だった。
そんな私を見て三井さんはぽかんとした顔で箸を止めていた。臣にいたってはククッと喉を鳴らし、笑いを堪えているようだった。恐らく、私が簡単に男の人を家にあげるはずがないかという、誤解していた自分への自嘲の笑いだったんだと思う。
