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告る勇気もない、自分に自信もない、だけどヤキモチだけは一丁前。今の私を分析してみて、自分で自分が心底嫌になる。こんなうじ虫な自分をどうにかしたい。そうは思うのになかなか行動にうつせない私は、とことんチキンヤローだ。
「あれ? 白鳥さん、来てたんだ」
そんなことを考えながら自販機でお茶を買っていると、背後から聞こえてきた声。振り返るとそこには寝起きのような顔をした三井さんがいた。
「み、三井さん。おはようございます。あの、昨日はありがとうございました」
ずっと言いたかった言葉をまくし立てるように言う。だけど三井さんは一瞬キョトンとして首を傾げた後、ああ!と思い出したように手を叩いた。相変わらずマイペースな人。きっと前世は野良猫だったに違いない。
「あれ? 白鳥さん、もしかしてコンタクトしたの?」
「あ、はい。今朝眼科に行って買ってきました」
「だから朝いなかったんだ。へ~いいじゃん! 可愛いよ!」
か、可愛い!? そんな高貴な言葉言われ慣れてなくて、どんな態度をとるのが適切なのかもわからず、その場でただアワアワする。だけどすぐにハッと我に返った。
これはリップサービスだというやつだ。つい喜んでしまいそうになったが、きっと誰彼かまわず三井さんはいつも言っているんだろう。じゃなきゃそんなに簡単に出てくるはずがない。
