「さっき何飲んだの?」
三井さんが不思議そうに聞いてきて、うーんと顎に手を当て考える。
「カンパリオレンジっていうめずらしいオレンジジュースをいただきました。甘くておいしかったです。カルフォルニアオレンジの親戚かなにかですかね?」
なんの迷いもなく真剣に答える。すると三井さんがぶはっと噴出した。
「白鳥さん、それマジで言ってんの?」
「え? マジですけど」
「それお酒だよ?」
「え!? そうなんですか!?」
あれってお酒なの? 知らないままお酒を口にしていたなんて、26歳にもなって恥ずかしい。世間知らずもいいとこだ。名前にオレンジとついていたから、てっきりジュースだと思ってた。しかもお酒だと知った途端、目が回ってきた。なんて正直な体なんだ。
「何も知らないんだね、白鳥さん。まじ奇特だわ」
言いながら三井さんはケラケラと笑っている。
「そんなに笑わなくてもいいじゃないですか」
「あはは、ごめんごめん。今時こんな疎い子がいるなんてさ。不覚にも、ちょっと白鳥さんのこと可愛いって思っちゃったよ」
可愛いって……嘘ばっかり。いつも仕事押し付けて、いいように利用しているくせに。煙たがっているくせに。
