少し歩いたところでふと後ろを振り返ると、さっきまであった臣の姿はいつの間にかなくなっていた。きっと色々と誤解しているに違いない。
少しくらい、妬いてくれた? なんて、都合のいいことを考えてみるけど恐らく無駄だろう。
婚活を勧めてくるくらいだし、むしろ幼馴染の前進に喜んでいるかもしれない……。三井さんとうまくいけばいいって、願われているかも。かなり複雑だけどありえる。明日嬉しそうにあの後どうなったのか、なんて尋ねられたらどうしよう。
「ひゃっ」
そんなことを考えながら歩いていたものだから、思い切りつまずいて転びそうになった。隣を歩いていた三井さんが驚いたよう声を上げる。
「白鳥さん、大丈夫?」
「あ、はい、大丈夫です。すみません」
我ながらなんておっちょこちょい。
「もしかしてさ、白鳥さん酔ってる?」
そう問われ、え? と三井さんを見上げる。酔っているもなにも、私はお酒なんて飲んでいないのだからそんなはずがない。
「いえ、酔ってません……。ちょっと足がもつれただけです」
「そう? ちょっと千鳥足な気がしたから」
そんな馬鹿な。そう抗議したかったが、目の前の街路樹に焦点を合わせてみると、心なしか頭がふわふわしていることに気がつく。まさかジュースで酔った?
