独占欲強めな同期の極甘な求愛




寝不足気味の体を奮い立たせ、満員電車を乗り継ぎ出社する。以前雑誌で見かけた、失恋翌日も社会人は休めないから辛いという記事。他人事のように感じていたけど、今日はまさにそんな気分だ。

「おはよ~ございま~す」

デスクに着くとすぐ、力ない声で挨拶されピクリと体が反応する。今日はどんな病弱アピールだ? とすぐ直感した。

「おはよ、江頭さん」
「白鳥さん、それわざと言ってます? 名字で呼ばれるの嫌いだからやめてって前から言ってるじゃないですかー」

口を尖らす後輩の江頭さんは、名字にコンプレックスがあるらしく、名字で呼ばれるのを極端に嫌がる。理由は某芸人さんを連想させるからだという。

とはいえ、本人そのものは全く似ていないし、むしろ真逆。彼はマッチ棒のように細見だが、江頭さんは出るところは出ているし、グラマラスな体系。セミロングの明るい髪を緩く巻いていて、女子力は高め。いまどきの20代女子といった感じだ。

「白鳥さん聞いてくれますー? 私いつも平熱は36.3℃なんですけど、今朝計ったら36.7℃だったんですよー。もう体が火照っちゃって、頭もクラクラするんですー」
「……」

それはつまり、平熱ってことでは? 呆れながらもパソコンを立ち上げながら、彼女の話にうんうんと相槌をうつ。