─石川春臣。
スラリと映える長伸に、綺麗で涼しげな目元に形のよい薄い唇。
よく通る落ち着いたテノールの声。
そんな端正な容姿をしているのに優しくて親しみやすいと、内部だけでなく他の部署からの人気も集める私の上司だ。
…きちんとお礼を言えてたら良かった。
私が愛想よく笑えなくて無愛想なのは、物心ついた幼い頃からずっとだ。
こんな生活を送っているせいで表情筋が固まってしまったからとかいう訳じゃない。
「はぁ…」
思わず漏れたため息を隠すようにハンドルから外した左手でラジオの音量を上げ、ラジオから流れてきたロックなナンバーをいくつか聴き終えた頃にはスタジオに到着していた。

