「ち、違、私…っ」
涙を引っ込めようとしても、心に反するようにして涙がぱたぱたと溢れる。
人前で泣くなんて信じられない。
…それも好きな人の前でなんて。
今まで誰かの前で泣いた事なんて一度もなかった筈なのに。
「西野、もう大丈夫だから。
とりあえず映画館出ようか」
「…はい」
もう一度なだめるように優しく頭を撫でられた後、石川部長に手を引かれて映画館を出た。
映画の上映は夕方からだったというのもあり、外に出るともうすっかり日は落ちて薄暗くなっていた。駅までの道のりを、石川部長に手を引かれたまま歩く。
手を引かれる──といっても、恋人同士のような甘い雰囲気のものではなく、親が泣いている子供を連れて歩くようなもの。
それでも私にとっては好きな人と手を繋いでいる事に変わりはなくて。
ドキドキやらまだ拭いきれない恐怖やらで頭はパンクしそうなくらいにいっぱいいっぱいだった。

