───もう無理。あまりの恐ろしさに泣き出してしまいそうになった時、石川部長が私の耳元に顔を寄せ、小さな声で囁くように尋ねた。
「無理そうならもう出ようか?」
いつもよりずっと近い距離で石川部長の声が響き、心臓が跳ねた。
おかげで恐ろしさに興奮してしまっていた頭が少しずつ冷静になっていく。
せっかく木嶋がチケットをくれて、
あの石川部長と二人で映画を見ているのだ。
途中で席を立つなんてしたくない。ちゃんと最後まで見たい。
…それがどんなに恐ろしいホラー映画でも。
少し躊躇った後に、映画館だからと私も石川部長の耳元に口を寄せて応えた。
「大丈夫です、頑張ります」
そう囁くように応えた声は小さく震えてしまって、自分でもひどく情けなく、石川部長に小さく笑われてしまった。
やがてとても長かった1時間45分の上映も終わり、エンドロールが流れる中を満員だった客に流されるようにして席を立ち、シアタールームを出た。

