「あーほらやっぱり〜!絶対そうだと思ったんだよね。誰?誰?」


梨架が身をのりだすようにしてそう、尋ねてくる。赤面してしまった自分を責めつつ、そう言われて頭にうかぶのは石川部長の顔だった。



「…別に誰でも…だからどうこうなりたいとか考えてないし…」

そう言うと、その言葉を聞いた梨架の顔つきが急に変わった。
目を三角にした梨架が、叱るようにわざと大きなため息をつく。

「お姉ちゃん、何甘えた事言ってるの?
好きな人が出来たなら、振り向いてもらえるように頑張るのが普通じゃないの?」

「でも…」

「まずはその前髪を切ろう!」

「それはちょっと…」


梨架が芸能界に入ることになってから、自分の中で恋愛はしないと決めていた。

ヘアスタイルもあまり変えたくない。



それを梨架の目の前で口に出す事はできなくて、誤魔化すように目をそらす。





「…お姉ちゃんお願い、私のために何かを我慢することなんてしないで欲しい」


目をそらしてからしばらくして、そんな梨架のか弱い声に驚いて視線を戻す。