自分が、メールの文章の淡白さを修正して、あまつさえ子供っぽくなかっただろうかなんて気にするようになるなんて。

会社ではなるべく淡白に素っ気なく冷血に振る舞ってきた私が、一体どういう風の吹きまわしだろう。


暗くなったスマホに反射する自分の顔は、前髪で隠れてその表情はわからない。


 
──お姉ちゃんにちゃんと恋愛とか、お洒落とか楽しんでほしいと思ってる。


いつかの梨架の言葉が蘇った時だった。




「お、元気に出社してるな」


背後からそう優しい声がかかった。

「わっ!?」

浮ついた事を考えていた事もあって、
声をあげて驚いてしまった。


「い、石川部長、おはようございます」


椅子から立ち上がって頭を下げると、そこにたっていたのは石川部長だった。

小さく笑われて、思わず心臓が跳ねる。

「わざわざ立たせて悪いな」

そう言う石川部長の声が、
…なんだろう。石川部長の声を聞くと、まるで自分の耳をその声でくすぐられているような気分になる。


「いえ。…あの、メールありがとうございます。
体調はもう大丈夫です」