隠れたがりな君には、明け透けな愛を。ー番外編追加しましたー


オフィスには誰もいないかもしれないと思ったが、カタカタとキーボードを叩く音が部屋から漏れていて一番乗りじゃなかったなと少し肩を落とした。

早く出社をしたらよくある事だが、
オフィスに誰かと二人きりで過ごす時間は少し気まずくて苦手だと内心で舌を出しながら静かに足を踏み入れる。

少しだけ眉間に皺を寄せ、右手に持った報告書か何かを見ながら左手だけでキーボードを叩いていたのは石川部長だった。

私に気がついたのか、石川部長がパソコンに打ち込んでいた手を止める。

「おはよう西野、早いな」

「おはようございます。あの…昨日はありがとうございました」

もっとちゃんとお礼が言えていたら。
そう思ってはいたが、まさかそのチャンスがこんなに早く来るとは思っていなかった。

「木嶋、しつこかっただろ?あいつは本当にどうしようもないからな」

そう言う石川部長の声色は木嶋さんの事を本気で侮辱していない。
きっと二人は仲がいいんだろうな。
昨日も、そういえば石川部長は木嶋さんの頭を気兼ねなくポカッとやっていた。