湊人に借りなんか作るんじゃなかった。
もう早く食べてしまおう…。
そんな事を思いながら、まずお浸しを口にした時だった。
「……!」
優しくて、丁度いい味付け。
美味しくて、今まで強張っていた頰が自然と緩んだ。
定食に添えられるようにしていたお浸しだけでなく、もちろんメインの焼き魚も、もっとずっと美味しい。
「美味いだろ?」
そう尋ねられ、
思わずこくこくと頷いた。
すると、
「莉子が好きそうだと思ってたけど、正解だったみたいで良かった」
湊人がそう言ってあまりにも優しい顔で微笑むから、反射的に目を反らした。
「和食好きなのは梨架も一緒だから、今度誘ったら」
目を反らしたままそうつっけんどんに返すと、湊人にまたため息を吐かれた。
「お前なぁ…いつまでそんな事言ってるつもりだよ」
「そんな事って?」
とぼけたように冷たく返す。
…ほんとにとぼけてるのはどっちよ。
今も昔も、私にばかり構っておきながら、本当に好きなのは梨架の癖に。

