無理よ。
そう断言しようとして…
梨架の苦しそうな表情に思わず口を閉じた。
梨架が、私がいつも目立たないよう地味以下な格好をして生活しているのに責任を感じているのはわかってる。
でも、それは梨架のせいじゃない。
梨架は幼い頃からお芝居をする事が大好きで都内の小さな劇団に所属していた。
私も梨架の演技が好きだった。
そんな梨架が才能や容姿を見初められてスカウトを受けるようになるのも時間の問題で。それでも私の事を思って芸能界に入る事を渋って当然のように諦めようとしていた梨架を、無理矢理に芸能界に入るよう強制したのは私だ。
舞台を超えて、世間のもっと沢山の人に梨架の演技を見て貰いたい。認めて貰いたい。
大きな世界で羽ばたく梨架が見たい。
その為ならこんな生活を送るくらい全然苦にならない。
だけど、私が梨架の双子の姉だという事がばれてしまうのは嫌だ。
…昔のように梨架のファンにストーカーされる事が怖いし、今日のように木嶋さんのような人にしつこく絡まれるのも本当に嫌だ。

