稀に勇気と活力を貰った俺は
今日も前向きに患者に
向き合う事が出来ていた。

情けないけど俺は拙い糸に
縋り付いていないと医者という仕事を
全う出来ずにいた。

あの日、稀を迎えに行けた事。
あの日、稀を手に入れた事は
俺の人生の最大の幸運だと思う。

今の俺にとって稀は
なくてはならない存在だった。
俺は、稀によって生かされていた。

そんな人間が医者でいいのかと思う
気持ちは心の端っこに常々あるけど
でも、俺には弱音を吐く暇などない。

雄大「はい、ありがとう。
大輔くんは錠剤が苦手だったな。」

彼は、俺が研修医の頃から診ている患者。
ここにやってきた頃は10歳だった。