佑磨「だって、不安にさせないために
前向きな言葉をかけるよね?普通。
前の病院はそうだったから。
期待して手術して、何度も
入退院を繰り返して、でも全然
良くならなかったよ。
俺ね、この病院に来て初めて
余命宣告されたんだよ。」

雄大「...そう、だったんだ。」

佑磨くんの担当医になったのは
早期研修医時代。
産まれた時から心臓の弱い
佑磨くんは幼い頃から病院に
通っていた。子供に現実を
伝えるのは心苦しい。
その気持ちはよく分かるけど
でも、反対に体の不調を
感じるのは患者自身なんだ。

佑磨くんは多分もっとずっと前から
分かっていた。自分が他の人達と
違うという事を。

佑磨「俺は、この病院に来て
冴島先生が担当医に
なってくれて良かったよ。
冴島先生の言葉は不思議と
信じようと思えるんだよ。」

雄大「そっか。」

佑磨「だからさ、冴島先生。
3日も待たなくていいから
手術してよ。...俺、生きたいんだ。」

雄大「うん、分かった。」

笑顔で佑磨くんの病室を出た俺は
すぐにその笑顔を忘れてしまった。

健康になった佑磨くんが
拓磨くんの死を知った時
どんな想いをするだろうか。

自分の心臓は拓磨くんのものだと
気付く時が訪れないだろうかと
漠然とした疑問を抱えていた。