父「冴島先生、よろしくお願いします!
拓磨の意志を尊重し
佑磨の命を救って下さい。」

雄大「はい。」

御両親からのサインを貰った
冴島先生は部屋に戻るなり
死亡診断書を作成し始めた。

蒼太「お疲れ様です、冴島先生。」

俺がコーヒーを置くと
ありがとうとお礼を言ってくれた。

蒼太「...あの...大丈夫ですか?」

その表情を見て聞かずには
いられなかった。
さっきまで平気な顔をしていた
冴島先生だったけど
今は別の...俺に近しい表情をしていた。

雄大「俺はこの世から臓器提供なんて
なくなればいいと思ってる。」

蒼太「え?」

雄大「心臓、肺、肝臓、腎臓、膵臓
その他にも臓器を待ち望んでいる
佑磨くんのような患者が
この世界には沢山いる。
そんな人たちを目の当たりに
しながらも俺は臓器を提供する
ドナーの事ばかり考えるんだ。
俺たちの手でこの書類を書けば
その人の死が確定する。
こんな薄っぺらい紙切れてで
ただの肉の塊になるんだ。」

だから、俺は冴島先生の事を
尊敬する。医者として何年もの間
働いてきたというのに冴島先生は
その命の大切さを忘れない。
生きたいと願う人の気持ちを
決して、忘れない。