雄大「なんて偉そうな事
言ってるけど俺もずっと
この手紙をご両親に渡せずにいる。」

冴島先生は1枚の封筒を俺に手渡した。

雄大「4年前、佑磨くんの
容態が急変した時、当時元気だった
拓磨くんにこれを渡されたんだ。
自分にもしもの事があって
佑磨くんの命を救える時は
自分の心臓を使ってくれって。
お兄さん想いのいい子だったよ。」

その手紙と共にドナー提供カードが
封筒の中には入っていた。

雄大「柳瀬は、前に怖いって
言ってたけど誰だって怖いんだよ。
いつ死が訪れるか分からない患者も
その命を託された医者も
明日には消えるかもしれない命を
見守る両親や恋人も皆、怖いんだ。」

蒼太「冴島先生も怖いですか?」

雄大「いつも過酷な選択を
患者や家族に迫っている俺たちが
怖いだなんて言っちゃいけない。
俺たちは最善の方法を探すしかない。
懸命に生きようとしている人たちを
前にして怖いだなんて言っちゃいけない。
相手の決断に応えられるのは
俺たち医者しかいないのだから。」

俺はその瞬間、自信なんてものを
なくしてしまった。
冴島先生でさえそう思うのに
俺は医者としてやっていけるのだろうか。